インタビュー

自らが先陣を切って商品開発を推し進め、社員全員で世界一を維持し続けてゆく。

この記事は、平成29年9月に取材・撮影させていただきました。

本日は営業部がある東大阪のオフィスにお伺いさせていただきましたが、本社を置かれている南久宝寺町は、西村様にとってどのような町でしたか?

南久宝寺町にあるクツワビルは本社であり、私の生家でもあります。
あのビル自体は昭和10年に建ったものと言われておりますけれども、戦前の資料は全部燃えてしまって残っていないんですよ。
実はビルの真ん中に3つほど“穴”が空いておってですね、私が幼少のころ親父に「この穴はなんや」と聞いてみたら「焼夷弾の穴や」と(笑
戦争で久宝寺町は全滅しましたからね、その跡が残っていたんです。
本社ビルそのものは戦後に残った数少ないビルでもあったので、当時は税務署としてビルをしばらく貸し出したりしていたそうです。

私が生まれたのはその後で、いわゆる最後の「船場のぼんぼん」です。
当時は今と違いまして、通販も何もありませんから。
店頭でものを買わないと仕入れできないと言われていたので、九州やら北海道やら、あっちこっちから夜行の船に乗って久宝寺町まで来て。
そこで色んなお店を訪れるんですが、まずは皆“朝ご飯”を食べるんですね。
全部こちらで用意がしてあって、それも豪華な“朝ご飯”がずらーっと並べてあって。
皆ゆっくり休憩しながら2泊3日ぐらいおりましてね、その店で1日中買い物をして、違う店へもずーっと回って、また船で帰ると。
着いたらすぐ店頭に並べて売る、というね。

そんな時代でしたから隣近所はもう親類みたいなもんでした。
朝6時頃から皆ドアを開けて「おーおーおー」という感じでね、お互いに挨拶を交わしたり、掃除したり。
私も小学生時代は「今から学校行くのー?」とか「おかえりー!」とかね、本当に親しくやっていただいた思い出があります。
けれども今は、なかなか商売が難しくなってきた時代ですからね、昔から知っている方は大分と減ってしまいましたが、親孝行でもありますし、やはり“格好がつく”ので久宝寺町に本社を置いています。

続いて事業についてお伺いしたいのですが、西村様が社長になられてから、メイン商材をファンシー文具から定番文具に転換したと伺いました。何かきっかけがあったのでしょうか?

ファンシー文具というのは、その時々の流行品を文具にした商品です。
流行りの漫画の絵をつけたり、色をつけたり華やかにしたり……。
当たれば大きいモノですが、流行品ですからね、1週間に1万個作って、そのうち1,000個は売れたけれどあとの9,000個は売れない、ということもある商品で。

一方で定番商品は、開発には時間もお金もかかりますが、開発してしまって定番化したあとは努力次第で安定して売り出すことができる商品です。
ですので流行品のような“イチかバチか“の商品を主軸においていては、業績も不安定になりますし辞めてしまおう、と考え定番化を打ち出しました。

クツワさんの定番文具は、機能性と利便性だけでなく安全性も追求され、さらに付加価値がある商品が多いですが、そういった商品はどのようにして生み出されるのでしょうか?

私がすべての商品を見ていて、最終決定もすべて私が行います。
昔は「ぼんぼんは番頭に任せて」という時代もありましたが、今は社長が先頭を切ってモノを考え、知恵をだしたりせんといかん時代です。
土曜日曜はオモテに出て、文具だけはでなく雑貨や家庭用品など様々なものを見て観察をしていますね。
若い女性が好むお店にも、こう……そ〜っと入ってみてですね、端っこの方に座らしてもらってパスタを食べてみたりですね(笑

それもこれも、開発会議に私も参加するからです。
腕組んで感心しとったのでは社長とは言えません。
開発部員と同じ土俵に立って、対等にモノを言えないと切磋琢磨できませんからね。
そのためにもまずは文具に限らず「これはどこどこにあったな、見たな」など、市場を把握しておかないと。

商品の発想もまず、社長である私がします。
それを具現化してくれるのが社員です。

例えばコンパスであれば「使っておって針が危ないなぁ、針のないコンパスを作れんかなぁ?」であったり、「替芯をいちいち変えるのはめんどいなぁ、ここにシャープペンシルの芯は入らんかなぁ?」など、常日頃からそういった眼や考えをまず私自身が意識していたからこそ、改良されたコンパスが生まれ続けています。

チームリーダーにもよく話していますが、「トップダウンが70パーセント、ボトムアップは30パーセント」だと思うんですね。
椅子に座って待っているだけではダメで、仕事の内容を針の先まで理解する必要が、上に立つ人間には必要なんです。
ですから今作っている防犯ブザーは、自分たちで設計図どころか中の配線までできるほどです。
頭がダメなら尾っぽもダメになると思っていますので、まずは私が先頭に立って社員を引っ張ります。

続いて「ふわふわムースのかみねんど」の開発者である杉原さんにもお話しをお伺いしたいと思います。

この「ふわふわムースのかみねんど」は、パステルカラーなのでスイーツなどの柔らかいイメージの作品作りに適しています。
粘土は自社工場で作っていて、小さなお子様でも練りやすい硬さを考えるだけでなく、型で抜いた際に“くっつきにくい”ように調整したり、粘土独特の臭いがあまり手に付かないようになど、様々な工夫を凝らしています。
流動性を研究することで“押出器”の小さな穴から出てくるようにしただけでなく、絵の具のように混色することも可能で、ゆくゆくは使っていただいたお子様方が大人になられた時に「こんな商品あったな、いっぱい使ったな、楽しかったな~」と思い出していただけるような商品づくりができれば幸せだと思っています。

そもそもこの粘土は、建設中の高層ビルを眺めていた社長が、壁を作るために使用されている“軽量ボード”を見て「あの技術を粘土に役立てられないだろうか」と思いついたことから生まれました。
そういった本来文具とは全く関係のないジャンルから発想を得た商品が、弊社には沢山あります。

最後に、既に「クツワの筆入は世界一」のクツワさんですが、今後の事を教えてください。

そうですね、その世界一を維持し続けるために、努力を重ねていこうと考えています。
宇宙一っていうのは、ありませんからね(笑
まず維持するのも大変ですし、それだけではなくて“世界一の商品”の点数を増やしていこうと思います。

昔は文房具は“貧乏具”といって、粘土などは“足で蹴って歩く商品”だと言われていました。
それが今では国内の文具・玩具業界だけでなく、国外からも真似をされるようになりました。
真似されたものは、さらにその常に上を行き続けなければなりません。
何十年とかけて開発した薬をコピーされて、開発した方の会社が負けてしまったのも記憶に新しいですよね。

戦い続けるためには、常に開発を続けていくことが必要だと考えています。
幸い、社員だけでなく関連会社やパートさんに至るまで、みんなが集まって高みを目指して集中してくれているので、大手流通グループからの工場査察でも最高の評価をいただいています。

今後も「クツワのマークはナンバーワン」を合言葉に、全員の力をひとつひとつを引き出しながらしっかりと積み重ね、日本一、世界一を勝ち取っていきたいと思っています。

クツワ㈱
中央区南久宝寺町 1-3-9
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電話番号
06-6745-5630
FAX番号
06-6745-5610
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<文房具・生活雑貨の企画、開発、製造、販売>文房具,学習用品,生活雑貨

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